生きてるだけですごい

どんな人でも、悩みや苦しみを抱えている。
けれど、それがどんな内容なのか、どれほど深いものなのかは、外からはわからない。
多くの人は外に出さないからだ。

弱みや悩みは、人にあまり知られたくないものだ。心から信頼できる相手になら話せるかもしれないが、それでもすべてをさらけ出せるとは限らない。

私もまた、多くの悩みを抱えている。人に言えるものもあれば、言えないものもある。
人が悩む理由は、家族関係、友人関係、お金、恋愛、結婚、子ども、将来、心や体の健康、発達特性、内面的なこと…本当にさまざまだ。
私の場合は特に、自分の内面や指向性、発達特性、能力に関して悩むことが多い。

悩みはなくならないのだと思う。ひとつ解消されても、次の悩みが生まれる。
人間には欲があり、ないものねだりをしてしまうからだ。

夜、研究室でひとり机に向かっているとき。周りが静まり返り、誰にも邪魔されずに思考と向き合うと、心に悩みや苦しみがあふれ出し、泣きたくなることがある。そんなとき、私は大森靖子さんの「Rude」を聴く。東野幸治さんが出演するMusic Videoを観ながら。この歌は、人生の苦しみに真正面から寄り添ってくれる。苦しみを紛らわせるのではなく、「直視したうえで、それでも前を向こう」と思わせてくれるのだ。「手順通りできないからおもろいこと起こるのだ」という歌詞が特に好きだ。人生は思い通りにいかない。だからこそ、想像もしなかった面白いことがきっと起こるのだと信じられる。

ひとしきり感情に浸ったあと、戸締りをして帰路につく。自転車をこぎながら、ふと思った。
「生きてるだけですごくないか？」
この世の中は、全然きれいじゃない。まったく平等じゃないし、理不尽であふれている。
それでも毎日、悩みながらも、苦しみながらも、こうして生きている。

やっぱりすごい。